合同会社ユーキューブ代表社員
スタック・オーバーフロー・エンジニア 仲西 悠
スタック・オーバーフロー・エンジニア
「スタックオーバーフローエンジニア」。仲西悠は自らの肩書きを、そう定義づけている。業界では、サーバ、データベース、プログラムをこなすエンジニアのことを「フルスタックエンジニア」と呼ぶが、経営管理や営業も含め、より幅広く手がける仲西は、コンピュータ用語で「桁数に入り切らない」という意味の「スタックオーバーフロー」の名を冠した。27歳の時に、Webサイトの制作・運用・コンサルティングの3つの領域を網羅した合同会社ユーキューブを設立。ITを使って売上につなげる方法を知らない法人や個人に、ビジネス成長のサポートをすることを使命に掲げた。もはやIT無しでは成り立たなくなった現代社会だが、その仕組みを知る人はほとんどいないと言っていいだろう。そんな一般の人々とインターネットの世界をやさしくつなごうとしている仲西悠の生き様を追ってみた。
「延長コードと生のカセットテープ」
クリスマスプレゼントは何がいい? と親に聞かれ、幼少の仲西悠がリクエストした品である。同年代の子どもがナントカレンジャーやナントカライダーに熱中する年頃だけに、両親はさぞ心配したことだろう。そんな仲西少年にとって、家の中にあったMS-DOSやWindows3.1はすぐさま興味の対象になった。
「スタートメニューの中に自分の知らない機能があると、興味津々でパソコンに詳しい叔父に聞いたりしていましたね。小学校の時からネットサーフィンを始め、中学の時にはホームページを立ち上げ、管理・運営もしていました。インターネットという言葉すら、同級生のほとんどが知らない時だったと思いますよ。」
高校時代もプログラミングに熱中し、関西学院大学に進学後も個別指導塾の講師をしながら、自作プログラムの公開など、趣味のレベルは徐々に本格化していた。
「大学の授業で、ある講師が『私が大学生だったら絶対にIT業界で起業している』という言葉を聞き、よしっと思って、個人事業主としてプログラムの受託開発を何件かしていました。」
20歳の時に趣味で公開していたプログラムに脆弱性があるとセキュリティ情報収集団体に指摘を受けたことがある。
「それ以来、セキュリティについて勉強し、重視するようになりました。それは現在の仕事でも変わらないですね。」
すぐに起業することも考えたが、エンジニアとしての腕だけでなく、社会経験も必要になると考え就職活動を開始。大学卒業後に上京し、日本アイ・ビー・エムでキャリアをスタートさせた。
日本アイ・ビー・エムでは大手企業のシステム開発に携わり、その後、医師向け転職サイトを運営するエムスリーに転職。サイトの開発・運用をリードした。
この頃、プライベートで開発した「ゆりえちゃん」というコミュニケーションアプリがある。「Yo」とゆりえちゃんに通知を送ると、ゆりえちゃんから「Yo」と通知が返ってくるのだが、ゆりえちゃんからのレスポンスが早いときもあれば、遅いときも、無いときもあるというもの。シンプルだが一部マニアには受けていた。
「日本の萌え文化を輸出したるっ! と英語化したら、アメリカ企業から“一緒に仕事をしよう”とオファーがありました。アメリカのエンジニアは日本より単価が高いのですが、その現地価格で契約し、英語でコミュニケションしながら仕事をしたことがあるんです。」
この経験が、仲西の心に火をつけたという。
「あれ? 自分の作ったものをこうやって発信して、自由に仕事スタイルを選べるなら、日本で正社員をしているより、圧倒的にいいんじゃないか? って思っちゃいましたね。どうせいつかは、この道で起業するんだから、親が元気なうちの方がいいと思い、起業を決断しました。」
ゆりえちゃんがいなければ、今の会社はなかったかもしれないと振り返る。
2014年10月、合同会社ユーキューブを設立。仲西悠27歳の時だった。
小学生の頃からパソコンと向き合ってきた仲西は、リアル世界のコミュニケーションが少し苦手だった。そんな少年が起業するまでに至った背景には、20歳の時に経験した“人生観が変わった事件”が大きく影響しているという。
大学時代にアルバイトで個別指導塾の講師をしていた時の話。生徒に授業をしている最中に、仲西は体調の変化を感じ始めていた。
「調子が悪いなーとは思っていたんですが、急激に耐え切れなくなって、出してしまったんですよ、おしりから。ちょろっと漏らしたレベルならよかったんですが、まるで堤防が一気に決壊したかのように漏らしてしまって...。」
その後、お尻をおさえながらトイレに逃走。携帯電話で事件を通報し、別の講師にパンツを買ってきてもらった。だが、すぐさま戻ることもできず、結果的に授業放棄となった。
「どんな顔して教室に戻るか、苦悩の時間を過ごしました。アルバイトを辞めることも考えましたね。しかし、辞めてしまうとある意味伝説になる。考えに考えた末、僕が落ち込んでいては周囲も話しかけづらいのではないかと思い、逆に開き直ることにしたんです。」
教室に戻ってまず発した言葉は、「コトがコトなだけに、水に流して」である。
「この出来事があって以来、これまで関係があまり良好でなかった講師とも溝が埋まりました。振り返って思うと、コミュニケーション不足から、プライドが高くて人を見下すような学生に見られていたんだと思います。そんな男が最も致命的な弱みを見せてしまったもんだから、一気に親近感が湧いたのかも知れません。自分をさらけ出すことで本当のコミュニケーションが始まるってことを、身をもって体現しました。」
起業前から、多くの企業や人と出会ってきた中で、ずっと心に引っかかっていたことがある。
「世の中には、ITを活用することで改善の余地がたくさんあるにも関わらず、知識不足からITを活用できていない企業や人があまりにも多い。それを是正し、微力ながら情報化社会に貢献したいという思いもありますね。」
仲西が起業したもうひとつの理由でもある。
「Webサイトを制作するときに、制作費や運用費を“コスト”と考えるお客さまがたくさんいます。いつもお話しさせてもらっているのですが、Webサイトは、その企業や人に利益をもたらすもの。ある意味で“お金を生み出す資産”なので、制作費や運用費は“投資”なんです。」
例えば株式投資の場合でも、利益を期待して株を購入するが、そのまま何年も放置していたら、逆に損失することもある。時代の流れやトレンドを読み、“運用”することで、利益が生まれるようになる。株もWebサイトも、いわゆる“塩漬け”にしていたら利益は期待できない。そして、両方とも利益が出るよう運用するには、ある程度の専門知識と経験が必要だ。
「ユーキューブの場合は、Webサイトの制作・運用・コンサルティングの3つの領域を網羅しています。それぞれ専門の業者が存在しますが、別々に頼むと圧倒的に割高になりますね。」
制作面では、内部構造まで熟知しているので、最新トレンドを取り入れ、希望のカスタムにも対応。運用面では、セキュリティ対策を熟知し、最適なサーバ管理を実現。そして、SEOなどの知識が豊富で、Webを使った儲け方を知っているので、コンサルティングも強い。
「セキュリティ対策も軽く見られがちですが、Webサイトが表示できない状態になると、企業の“損失”につながります。その時間を最小限にしていくことも、僕の役割だと思っています。」
ITを使って売上につなげる方法を知らない法人や個人に、ビジネス成長のサポートをすること。ユーキューブを立ち上げた仲西のミッションが、ここにある。
text by Hayashi“rice”Tomoaki
合同会社ユーキューブ Web サイトの制作・運用・コンサルティングの3つの領域を網羅しているゼネラリスト。
現代のビジネスには欠かせないツールになっているのに、ほとんどの人がよくわかっていないWebの世界。さらに、ほとんどの会社がWebサイトを所有しているのに、その知識がある社員が存在する会社は皆無に等しいのが現実。わからないから業者の言うことを鵜呑みにするしかない我々にとって、強い味方となるのがユーキューブだ。Webサイトの制作・運用・コンサルティングの3領域を網羅できる企業や人は意外に少なく、その知識を持った人が身近にいれば、これからのビジネスには相当なプラスになる。Webサイトはお金を生む「資産」。Webサイトがお金がかかるだけの「コスト」になっている社長さんは、一刻も早く相談されることをおすすめします。